一般社団・財団法人に移行する場合の財産はどうするのか?−Part2−
2006年12月18日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
主席研究員 福島 達也

 前回、現行の公益法人が一般社団・財団法人に移行する場合、移行時の正味財産を公益日的のために支出しなければならないということを述べたが、ではいつまでに財産を使い切らなければならないのだろうか。

 まず、公益目的支出計画の作成に当たり、その実施期間は、法人ごとにその実情に応じて計画の実施が完了するまでの期限を自ら定めることとなる。

 そして、移行後はその期限内に公益目的支出計画の実施を完了させるようにする必要がある。

 しかし、特例民法法人が通常の一般社団法人・一般財団法人に移行してから公益目的支出計画の実施を完了させなければならない期間の上限を法律で決めてしまうのは必ずしも適当ではないため、法律上の期限は設けていないのだ。

 したがって、特例民法法人が通常の一般社団法人・一般財団法人に移行する際、公益目的支出計画を完了させるにはある程度長期の期間を要する事例については、合理的な理由があり、妥当な期間と判断されるときは、移行の認可をすることができる。つまり、100年かけて使い切るという計画であっても、合理的な理由があれば可能ということになるのだ。

 また、新規で設立した一般社団法人・一般財団法人の場合は、どこの誰も監視したり監督したりする機関は存在しないが、現行の公益法人が移行する場合は、財産を使い切るまで、その公益目的支出計画がちゃんと遂行されているか、監視されることになるのだ。

 その法人の監督(報告、立入検査等)を担当するのは、内閣総理大臣又は都道府県知事である。

 そして、監督官庁は、提出された公益目的支出計画通りに、移行した一般社団法人・一般財団法人(以下「移行法人」という。)が財産を使っていないと、移行法人に対して、業務、財産の状況についての報告を求め、又は移行法人に対し立入検査を行うことができるのだ。

 では、どういう場合該当するかだが、次のいずれかに該当すると疑うに足りる相当な理由があるときである。

正当な理由がないのに、公益日的支出計画に基づく支出をしないこと。
各事業年度ごとの公益目的支出計画に基づく支出が、公益目的支出計画に定めた支出に比べて著しく少ないこと。
公益日的支出計画に従い公益の目的に支出すべき残額に比べ、当該移行法人の貸借対照表上の純資産額が著しく少ないにもかかわらず、公益目的支出計画の変更の認可を受けず、そのまま放置した場合には、将来における公益目的支出計画の実施に支障が生ずるおそれがあること。

 こうして監督されるのであれば、今までの主務官庁制とほとんど変わらないという声もあるが、あくまでも、内閣総理大臣又は都道府県知事による移行法人に対する監督は、公益目的支出計画の実施状況についてのみ監視することになるのだ。

 だから、公益目的支出計画の実施に支障を及ぼすおそれのある資産運用について監視する等、公益目的支出計画の実施に必要な範囲内での監督を行うものであり、現行の公益法人のような所管官庁としての法人の組織運営及び事業活動全般に対する指導監督とは異なるのだ。

 また、移行法人は、事業年度ごとに、公益目的支出計画の実施の状況を明らかにする書類(「公益目的支出計画実施報告書」という。)を作成し、移行の認可を受けた内閣総理大臣又は都道府県知事に報告しなければならない。

 一度認可されたら終わりではなく、最後の最後まで毎年監視されるということになるのだ。

 さらに、報告や立入検査で問題が見つかった場合、内閣総理大臣又は都道府県知事は何をするかだが、次のような勧告、措置命令を行うことになる。

内閣総理大臣又は都道府県知事は、移行法人からの報告や自ら立入検査した結果、アからウまでのいずれかに該当すると認めるときは、当該移行法人に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
また、内閣総理大臣又は都道府県知事は、勧告を受けた移行法人が、正当な理由がなく、その勧告に係る措置をとらなかったときは、当該移行法人に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

 最後に、公益目的支出計画の実施が完了しない時点で精算した場合については、その定款の定めの如何にかかわらず、精算した法人が公益目的支出計画に従い公益の目的に支出すべき残額があるときは、その残額に相当する残余財産を、内閣総理大臣又は都道府県知事の承認を得て、その法人の目的に類似する目的を有する公益法人認定法に基づく公益法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人、地方独立行政法人等か、国、地方公共団体に帰属させなければならない。

非営利法人総合研究所

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